Microsoft の Copilot ゴリ推しは Microsoft 365 ユーザーに受け入れられるのか?

当ブログではあまりコラムっぽい記事は書きませんが、最近非常に興味深い海外の Microsoft MVP の中でも SharePoint 界隈では重鎮みたいな人が以下のブログを書いていたので紹介し、僕も取り留めのない事をツラツラと書いていきます。

Dear Microsoft: Stop It with Copilot, Already | Marc D Anderson’s Blog
https://sympmarc.com/2025/06/16/dear-microsoft-stop-it-with-copilot-already/

匿名SNSでは数年に1回くらいは「キミたち Microsoft MVP は Microsoft の犬」的な心無い言い方をされる事があります。そういう人もいるかもしれないけど、ほとんどの人はそうじゃないと僕は思っています。皆さんも何か一つくらい「推し」があるんじゃないかと思います。野球やサッカーのチーム?格闘技の選手?好きな自動車メーカー?アイドルや芸能人?足しげく通う飲食店?好きな果物?などなど。それ全て100%良いわけじゃないですよね。中には「こうなってほしい」という想いもあると思います。それら良い部分も悪い部分も期待する部分も含めて推しているんじゃないかと。僕らも同じです。ファンである Microsoft が言ってるから全肯定しているわけじゃないです。当ブログの購読者ならわかると思いますが、僕もなるべく Microsoft 365 の新機能には理解しようと歩み寄るけど、よくわからないものはよくわからないって言うし、イマイチだと思うところはイマイチって言っています。このマークさんは Microsoft MVP 受賞歴14年目という僕にとっても大先輩な人だし、英語圏では結構有名な人です。年に1回開催される Microsoft MVP Summit でも見かけるけど、いつも人だかりができているくらいです(僕は英語を話せないので遠くから見ているだけですが)。そういう人が書いたブログ記事が上にリンクを貼った先です。

この記事には、 Microsoft 365 Copilot ホーム(旧 Microsoft 365 ホーム。 Microsoft 365 にサインインした後に表示されるページ)が新しいUIに変わって、 Microsoft 365 Copilot ライセンスの有無関わらず、強制的に Copilot Chat を表示された事に対して、 Microsoft 側とユーザー側で大きな乖離があるのでは?という提起をしています。

これは僕にとっても非常に興味深い内容でした。というのも先日たまたま総務省が出している「情報通信白書」2024年版を参考に、世界各国と日本の生成AIの個人利用率と企業利用率を比較して考察してほしいというお願いをリサーチツール( Researcher )エージェントにお願いしたんです。その結果を見ても個人利用・企業利用どちらも中国やアメリカに日本は大きく遅れを取っている利用率でした。マークさんはアメリカの人なので、日本よりも大きく生成AI利用が進んでいるアメリカであっても、 Microsoft の Copilot 推しはユーザー側との大きな乖離があるという見解なので、そのアメリカよりも更に生成AIの利用率の低い日本では…と思うと興味深いですよね。勝手ながらアメリカではそういう意見はないかとも思っていました。

マークさんの記事は英語なので機械翻訳使って読んだ事もあるし僕の読解力にも関わるので「マークさんが言っていました」というよりは「オジサンが機械翻訳を読んでそう解釈しました」という体で以下は読んでいただいて、もし皆さんも関心があるようなら直接マークさんの記事を読んでみてください。その上で…。

記事内では「多くの組織はAIや Copilot を活用する準備が整っていない。」と書かれていました。 Microsoft だけじゃないけど、ITの巨人達が生成AIで盛り上がっていて、それをビジネスとするITエンジニアたちも盛り上がっていて、たしかに実際ゲームチェンジャーだし働き方も変わるしスゴイ時代になったと僕も思いますが、特に Microsoft 365 のような広い層に利用してもらうようなものは、そのエンドユーザー達にはまだその盛り上がりはたいして伝わっていなく、まだまだ懐疑的かつ冷静な目で見ているのは、僕も特に仕事を通して体感しています。記事内では「そんな状態で Copilot を前面に押し出されても、ユーザーにとっては何の役にも立たない」とも書かれていました。僕らは常に何らかのバイアスにかかっていると思います。例えば新卒で入社して1社しか経験していない人にとっては、その会社がその人にとっての社会人経験の全てでありそれが自分の尺度になります。なのでその会社特有の商習慣や慣習や専門用語なども一般常識だと思ってしまいがちです。またSNSなんかも危険ですよね。SNS利用者なんて世界の人口を考えると非常に狭い世界だし、自分が気に入った人をフォローしている時点で思想が偏っている場合も多いので、自分のタイムライン上の常識が一般常識とかけ離れている事もありますが、それに気が付けない場合もあります。IT技術コミュニティの世界も、そもそも世間一般の人は業務時間外に業務に関する事について学ぼうなんて思わないので、それに参加している時点で(良い意味で)変態なので、その中の考え方が世間一般ではない可能性もあります。話は逸れましたが、生成AIに対して「未だに業務で使っていない社会人はダメだ!」みたいな口調の人もいますが、そういう押し付けに冷ややかな目を向けている人が実は多いのかもしれないという事も考えないといけないですね。

他にも「 Copilot が自分に合っているかどうかは、各自が決めるべきです。」と書かれていました。これも僕もずっと言い続けています(あ、狭い世界のSNSで)。使って当たり前の世界はまだ先だと思っていて、少なくとも今は生成AIがアシストしてくれてうれしい人もいれば、業種や職種や性格次第で別に必要としない人もいて良いと思います。実は僕も検証での利用を抜かせば、おそらくそこまで積極的には利用していない方だと思います。それは僕のやっている業務がそういう業務だからです、と言いましょう。

さて、とは言うものの、記事の中で旧UIの時にホームにあったものがなくなったという言及もありますが、新UIの「検索」内におすすめやクイックアクセスなどは存在するし、アプリ起動ツールがなくなってもアプリをピン留めすれば左メニューに良く利用するアプリを置いておけば問題ないので、そこは大きな問題じゃないと僕は思いますが、たしかに「検索」内にそれらが押し込まれた事はユーザーは気が付きにくいので、以前から Microsoft 365 ホームを利用している人にとってはガッカリかもしれないし、だからこそ余計に Copilot Chat の押し付けが鼻に付くかもしれませんね。ただ、そもそも Microsoft 365 ホーム自体をどれだけのユーザーが利用しているのか?という点も僕は疑いたくなります。と言うのもエンドユーザーさんとよく話すと Microsoft 365 を利用するというよりは、 Word / Excel / PowerPoint は各デスクトップアプリから利用するし、 OneDrive for Business は同期アプリで Windows のエクスプローラーから利用するし、メールや予定表は Outlook のクライアントアプリから利用するし、 Microsoft Teams もデスクトップアプリから利用するけど、実はそれだけしか使っていないユーザーが多く感じます。 SharePoint ニュースも Microsoft Teams から見れるなど、わざわざブラウザーで Microsoft 365 にサインインしてホームを開くユーザーがそもそも実は少ないのでは?と思います。そう考えるとそもそも Microsoft 365 Copilot ホームが新UIに変わった事すら気が付かず「 Copilot 推しはどうなの?」という疑問すらエンドユーザーはあまり持っていない可能性もあるのではと思います。

食わず嫌いは良くないし、食べたら実は大好物かもしれないのに食べる機会がないから気付くことができない、など、もちろんそういう状態もあるので、「いいから一回食べてみなよ!」と食べる機会を与えるという意味では、この強引な Copilot 推しは一定の効果はあるとも思います。 Microsoft 365 Copilot ライセンスがなくとも Copilot Chat (Web) は安心安全に利用できますからね。そしてもちろん Microsoft もこれだけ Copilot に巨額の投資を行い、一方で外野からもわかるような経費削減やレイオフが続いているので、その投資をしっかり回収しなければいけないという事も企業として大事な事だし、だからこそおそらく Microsoft の従業員のKPIは Copilot にかなり縛られているだろうし、 もちろん世界的に影響力のある企業だからこそ世の中を良くしていこうという熱い想いも伝わってくるし、色々わかります。

さてさて、そんな感じで Microsoft の想いと ITエンジニアの想いと Microsoft 365 ( Copilot )ユーザーの想いに大きな乖離があるかもしれないという中で、最近はエージェント推しが凄いです。それはそれで凄い世界になってきていますが、これも更にエンドユーザーとの温度感の乖離が激しいんじゃないかと思っています。生成AIすら使っていない・使いこなせていないというユーザーが「え?エージェント?転職の?映画マトリックスのスミス?」という人もおそらく少なくないであろうし、実際に話を聞くと「エージェントって言葉は聞くけど、何なのか?何ができるのか?自分達がそれを使ってどう変わるのか?イメージできない」という話も非常に多く聞きます。

生成AIの技術が驚くべきスピードで加速しているITの世界と、それに全く追いついていけない人間とのギャップ。そのギャップが開く一方で、使って当たり前と思う人達や強引に使ってもらうように仕向ける手法。それを受け入れる人達と受け入れがたいとおもう人達。色々な思いが交錯する中でも、ITの進化は加速していきます。今後どうなるんでしょうか?全くわからないですね。

と、マークさんの記事を読んで興味深く思い皆さんにも紹介したいという気持ちと、特に何か芯の通ったポリシーがあるわけでもない僕が思った事を、とりとめもなくツラツラと書きなぐってみました。マークさんの記事も最後は「どう思いますか?」で締めていますが僕も同じです。皆さん、どう思いますか?