SharePoint のライブラリやリスト( Microsoft Lists のリストでもある)も徐々に便利になってきていますが、「多機能」と「わかりやすさ」はなかなか両立させるのが難しいので、特に初級者にとっては厳しいですね。ただし、多機能であってもシンプルに使えば良いので、難しい機能は「玄人のみぞ知る」みたいなメニューの奥底に配置されていれば両立できそうですが。
さて、今回はそのライブラリやリストに関して機能追加なので更に理解が難しくなる可能性がありますが「クイック操作」という新たな機能が追加されました。 2025/03/07 付けで Microsoft 365 管理センターのメッセージセンターに、以下のメッセージが公開されました。
▼(更新済み)Microsoft SharePoint: SharePoint のクイック ステップを使用して、一般的なタスクとワークフローを自動化します
一般提供が6月下旬までなので、すでに多くの人が利用できるようになっていると思います。
まずこのタイトルを読んで(おそらく特に日本人が)誤解しがちなのが「ワークフロー」という言葉。「ワークフロー=承認ワークフロー」という誤解をしがちだと思います。そして日本企業的な承認ワークフローを連想してしまうとガッカリしがちです。「ワークフロー」とはあくまでも仕事や業務の流れであり、その流れの中に「承認」行為が必要な場合もあるわけで、承認の必要がない仕事や業務の流れもありますよね。「承認+ワークフロー=承認ワークフロー」であって、「ワークフロー」という単語を見ただけで承認ワークフローを連想するのは海外製品の場合は特に気を付けた方が良いと思います。
というわけで、 SharePoint のライブラリやリストを利用した一般的なタスクもしくは仕事や業務の流れをクイック操作を利用して自動化させる仕組みです。では実際に触ってみます。
▼コマンドバーの「自動化」→「クイック操作」
作成するメニューと作成されたクイック操作を編集したりする管理のメニューの2つがあります。「クイック操作を作成する」をクリックすると、
▼クイック操作作成のダイアログボックス(リスト)
このようにクイック操作をクイックステップで(ややこしい)作成する事ができます。ちなみにリストとライブラリではできることが異なっていて、ライブラリの場合だと、
▼クイック操作作成のダイアログボックス(ライブラリ)
このようにライブラリの方が定義済のアクションが多いです。多いと言ってもファイルやフォルダーを移動またはコピーするアクションの2つですが。
では、リストに対して「メールの下書きを書く」というアクションを作ってみたいと思います。
▼次の画面
非常にシンプルな操作でクイック操作を定義できます。
▼例えばこんな感じに定義
このクイック操作は、リストのアイテムの作成者に対して、そのアイテムを編集した人が「あなたが作成したアイテムを編集させてもらいましたよ」とメールで伝えるという想定です。
▼作成した後は管理画面で作成したクイック操作を確認
これで作成完了したので、実際に使ってみます。
▼アイテムの「…」メニューから
このようにクイック操作を実行したいアイテムの「…」→「自動化」の配下に作成したクイック操作がメニュー化されているので、それをクリックします。
または、
▼コマンドバーの「自動化」から
このようにアイテムを選択して、コマンドバーの「自動化」内にも作成したクイック操作がメニュー化されているので、それをクリックしても実行できます。
▼メールの場合はどのアプリで開くかを選択
僕は Outlook on the web 派なので、今利用しているブラウザーを選択します。
▼えっ??
ブラウザーを選択したにも関わらず、アプリの Outlook が開きました…。う~ん、ここはブラウザー内で完結してほしかった。これ、「 Teams チャットを開始する」アクションを選んだ際も同じくアプリで開くような挙動になります。
全てのアクションを全てのパターンで試すのは大変なのであとは皆さんも必要に応じて試してから使ってみると良いと思います。
気を付けるべき点としては、「値を設定する」はリストに対して編集できる権限がないと利用できないし、ライブラリの「ファイルまたはフォルダーを移動する」「ファイルまたはフィルダーをコピーする」については、移動・コピー元ライブラリと移動・コピー先ライブラリの双方に編集できる権限がないと利用できません。権限なくても操作できてしまったら良くないので権限ファーストですね。ただ SharePoint あるあるですが、権限がないとメニューに表示されないのが理想ですが、そうじゃなくてメニューには表示されるけど実行しようとするとエラーが起きる挙動です。操作した人にとっては「操作した時間を返せ」とイラっと来る挙動は昔からの伝統ですね。
とりあえず試してみましたが、事前に自動化させたい操作を定義する事によって、メニューから定義した操作を実行できる機能でしたね。なので、リストやライブラリに対して何かしらの操作をした後に更にやるべき事(タスク・業務)がある場合、それをメニューからクイックに操作して実行できるようなシナリオでの活用になると思います。もちろんクイック操作は非常に簡単に設定できるけど定義されたアクションに限りがあるので、それぞれの業務シナリオにジャストに当てはまれば使えば良いし、複雑なシナリオの場合はやはり Power Automate なりで対応でしょうね。簡単なシナリオは簡単に実装でき、複雑なシナリオはスキルが必要。複雑なシナリオをスキルなしで実装できる世界はなかなか難しいです。この手の機能の際には必ず先に伝えるようにしていますが、後のメンテナンス性も考慮すると、まずは業務シナリオのシンプル化を検討した方が良いですね。
では、同じコマンドバーの「自動化」内の「ルール」や、コマンドバーの並びにある「通知」も類似したような機能ですが、違いは?
まずその前に、記事にし忘れていたのでここで余談的に書いちゃいますが、「通知」は今年2025年7月から2026年7月の1年間で段階的に廃止される予定です。
▼ SharePoint アラートの廃止
通知機能はルール機能か Power Automate に移行してくださいとの事です。なので消えゆく機能なのでもう使わない方が良いです。
では「ルール」との違いは?これは僕も特に自信をもって言えませんが、少なくとも機能面で言うとアクションを起こすトリガーが自動か?手動か?の違いかと思います。ルールの方は何かしらアイテムが更新された事をトリガーとして後続のアクションが実行されます。一方、クイック操作は上で試した通り、メニューからユーザーが自分のタイミングで手動で実行させる必要があります。そう書くと「全自動のルールの方が良いのでは?」と思いがちですが一概にそうとは言えませんよね。ユーザーの判断で実行するタイミングを図ったり、ユーザーの判断でそもそも実行させるかさせないかを決めるような業務フローもあるかと思います。
という事で、正直類似した機能の使い分けは明確に定義するのは難しく、実際触ってみて自分達の業務フローを考慮して使えるところは使っていきましょう!という感じになります。